AJFの活動

在日アフリカ人家族の生活を考える会:新・在留管理制度がはじまるとどうなるの?〜弁護士との相談会〜 報告

日本で暮らすアフリカ人家族が直面するさまざまな課題について一緒に考える集いです。

7月14日に開催した在日アフリカ人家族の生活を考える会講座の報告です。

次回は、12月ごろを計画しています。

報告■

新・在留管理制度(改正入管法)について、とくに在日アフリカ出身者を含む家庭に関する事項を中心にお話いただきました。

同制度について(入国管理局ホームページ)

開催日時:2012年7月14日(土)13:30-15:00(30分延長)
会場:早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター会議室
参加者:20人(スタッフ・サポーター含む)
保育対象者:4人


テーブルにはアフリカンスナック(デーツ、チャパティ、マンダジ)を用意。 さっそく会のスタートです。

最初は参加者全員自己紹介タイムからスタート! アフリカ出身の方々も、数年間滞在しており日本語がとてもお上手だったり、聞き取ることはできたりとのことでしたが、 日本人でも「???」となるような難しい単語が出てくる内容だったので、急遽サポーターが速記で訳しつつ会は はじまりました。


学生サポーターが速記で訳し、難しい日本語の説明をカバー!
同じく在留カードをもつ立場である留学生のサポーターならではの技でした

まず枝川弁護士のお話は、「変更点を点と線でたとえると...」とわかりやすくイメージを捉えるところから始まりました。 今までは外国から日本に来た人が、日本に入ってくる時と出ていく時、 その「最初の点」と「最後の点」を管理するのが入管の役割でした。 そして、間の線(日常生活)の管理やサービスは自治体が担当していました。 それが今度は、「線」の部分の管理も入管が担当するようになった、ということらしいです。 例外的に、住所関連(変更など)の手続きや住民票を基にした公的サービスに関しては、地域の自治体が担当するそうです。

次に、今回の変更点で主な4つの事項は以下だそうです。
(1)在留カードの導入
(2)在留資格が最大3年→5年へ
(3)みなし再入国制度(1年間)の導入
(4)外国人登録制度の廃止

ちなみに大前提でおさえておかなければならないのは、今回の制度は中長期滞在者だけを対象にしたものということ。
くわしくは「新しい在留管理制度の対象となる人たちは?」の部分をご覧ください。

「日本に住む外国籍の人たちは今の在留期間が切れる前までに、全員外登証から在留カードに切り替えなくてはなりません」。 枝川弁護士のその一言に、忘れないうちに早く地方入管に行って手続きしなきゃ、と参加者同士でも焦りの声。 「来週あたりにでも一度入管に行ってきます」という人も。

それに、このカード、スーパーへ買い物に行くときも、学校へ行くときもいつも持って歩かないと、「常時携帯義務」違反で 罰金をとられてしまうこともあるそうです。 ちなみに在留期間が切れるまでは、今持っている外登証がカードの代わりになるため、 こちらも持ち歩かなくちゃいけないそうですよ。ちょっとのお出かけでも油断できないのですね...。

外登証と在留カードってどう違うの?
罰則について

<見本>
↓外国人登録証には無かった「就労許可の有無」が表に記載されています。
画像:入国管理国HP

ここで参加者の方々は、「自宅に届いたのは自治体からの住所確認の手紙だけ。入管からは何にも連絡がない」との 現状を教えてくださいました。たまに「親切」な自治体は今回の制度変更に関わる連絡もセットで通知書に入れてくれることもあるけれども、当事者自身が在留期限を小まめチェックしたりちゃんと覚えていたり、こういったお知らせを敏感に情報収集したりと、気をつけなければいけないことが増えたようです。「面倒くさい」と放っていては、あとでもっと面倒なことに…。

「不法滞在者には厳しい、それ以外には良い制度」と入管の方がニュースで言っていたけれども、 現状を聞くと「管理側が管理しやすいように」都合よく作られた制度にしか思えません。

大学生の参加者からは次のようなお話もありました。 「同級生が、韓国からスポーツ留学で特待生として来たのですが、 身元保証人がVISAとか管理していて、自分では把握していなかったんですね。 そしたら知らないうちに在留期間が切れてて、強制退去になっちゃったんです。 そうなると、数年は日本に再入国できなくて。 4年の契約でも、特待生は成績によっては4年も在学できるとは限りませんし…」。

また、興味深かったのは、参加者が自分のケースについてのみではなく、 難民申請中の友人はどうなるのかなど、周りについても心配していたことです。 同制度が施行されることが決まってから、入管や各NGOなどで説明会があちこちで開かれてはいるものの、 一方的ではなく、新しい制度の対象となる人たち同士での情報や、加えて経験談も共有しあう場がもっと必要なのでは、 と感じました。
終了後には、今回の相談会がそういった場の1つになった、と参加者の方々から言っていただき、 会を企画した甲斐があったな、と思いました。


参加者の質問の嵐!講師だけでなく参加者同士でも情報や経験を共有しました

以下、会の中で出た質問と回答の一部です。

Q.離婚訴訟で離婚になったということで再入国できない、在留資格が もらえなかったりして…。
A.いえいえ、そもそも離婚訴訟で離婚したからといって、そのことが「犯罪」になるわけではありませんので、注意を。


Q.制度が変わるために新たに税金が増えたりすることはないですか?
A.それはないです。


Q.永住者がみなし再入国許可により一時出国して、海外で1年を超えた場合、大使館や在留公館で更新できますか?
A.できません。永住者であっても、1年を超えて出国する予定がある場合には、これまでどおり再入国許可を受けて出国する必要があります。
みなし再入国ってなに?
みなし再入国に関するQ&A

Q.「帰化」する場合はどんな条件があるんでしょうか。
A.5年以上日本に住んでいること、20歳以上、自分の国の成人年齢を越えていること (プエルトリコは14歳だそうです!)、素行が善良であること、 経済的に1人でやっていく生活力があること、二重国籍にならないこと(自分の国の国籍は消すこと)、 日本政府を暴力で破壊すること等を企てたりしない者であること(詳しくは国籍法5条)。

<回答保留になった質問>

Q.アフリカ出身の留学生で、奥さんを日本に連れてきた友人がいます。 その後離婚した場合、就労もしていなかった奥さんが子どもと一緒に日本に残れる手段はあるんでしょうか。
A.うーん、日本の制度は「血の繋がり」を重視しているきらいがあるので、なかなか難しいです。

以上   文責:AJFインターン和田

<参加者の声>


★講師 枝川弁護士

重い制裁が課される制度が導入されたにもかかわらず、十分な説明がなされていないこと、 他方で当事者の方々はさまざまな問題意識を持ち、さらに気軽に相談できる場がないことがわかりました。 また私自身、その意味で大変勉強になりました。

今回のような場が設定・提供されたことは、アフリカと日本をつなぐNGOらしい 活動として有意義であったのではないかと思います。

★コンゴ民主共和国出身 男性

企画者からのお誘いがあり、枝川弁護士との相談会に参加させていただきました。ありがとうございました。 この機会があってこそ、親切なAJFの皆様と出会い、新しい人と知り合って、感謝しています。 また、最も重要なことはアフリカのお菓子を食べながら、リラックスした雰囲気で、枝川弁護士と 相談会に参加した方々の分かち合いによって、私はある程度 新・在留管理制度についての主な 変更点の理解ができてきました。 例えば、在留カードと特別永住者証明書が交付され、在留期間が最長5年になり、 再入国許可の制度が変わってきたことです。また、外国人登録制度が廃止され、 外国人は日本人と同様に、世帯員として、住民票写し等に記載できるようになったことです。 更に、在留資格や在留期間の変更等の手続きが、入国管理局の1か所への届出のみとなり、手続きが簡素化されたことです。

在日アフリカ出身者等を含む家庭に関する事項を中心にお話をしていただくのは、非常に意味深いことだとおもいます。また、在留管理制度が変わることとともに新たな派生的な問題が生じるに違いありません。 しかし、その時には、生じる思わぬ難関にぶつかる方々が良い指導をいただけるようにと期待しています。 これからも、宜しくお願いします。

★日本人女性(ブルキナファソ出身の旦那さん、お子さんたちと一緒に)

先生や他の参加者の方のお話を聞いてとても勉強になりました。 今回の制度をまだ知らない友人たちに伝えようと思います。

外国人の取り締まりを一層厳しくしようとする日本政府にがっかりする私ですが、 夫含めアフリカ人参加者の方が「それがこの国のやり方なら従わなきゃね」と前向きに捉えている ことに逞しさを感じました。

会場はとてもこじんまりしていて、ざっくばらんに質問できる雰囲気がとても良かったです。 出して頂いたアフリカンスナックも珍しいものばかりで、スタッフさんたちのおもてなしに感動しました。 ごちそうさまです。おいしかったですよ(^-^)

子どもたちもお兄さんお姉さんに遊んで頂き、楽しい思い出になったようで嬉しいです。 またぜひこのような機会を設けていただきたいと思います。ありがとうございました。

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