アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

アフリカゾウの不確実な未来についての国連の新しい報告書


TRAFFICがCITES締約国会議に向けてまとめた報告書を、AJFが翻訳・紹介するものです。引用する際には、原文にあたってください。
New report warns of uncertain future for African elephants

アフリカゾウの不確実な未来についての国連の新しい報告書

この10年の間に、ゾウの密猟は2倍に、象牙密輸が3倍になり、既に少数であるゾウの頭数を脅かしている

危機回避のために法的規制強化、国際協力、および需要削減努力が必要

バンコク、2013年3月6日- アフリカ大陸のゾウの頭数は、象牙密輸の増加と共に、深刻に脅かされる状態が続き、密猟されるゾウの数はここ10年の間に2倍、押収された象牙の数は3倍にも及んでいる。

国連が新しく発表した『殺されるゾウーアフリカゾウの危機』によれば、密猟の増加、および彼らの棲息地の喪失は、現存する中央アフリカのマルミミゾウにとどまらず、以前は一定数の確保が可能と見られていた西、南、東アフリカのサバンナゾウの集団も危険な状態に冒されている。

国連環境計画(UNEP)、ワシントン条約(CITES)、国際自然保護連合(IUCN)、野生動物貿易管理ネットワーク(TRAFFIC)によれば、組織的な管理によるアジアへ輸出された象牙の大規模な差し押さえは、アジア・アフリカ間の象牙違法売買に、犯罪ネットワークがより積極的に介入していることをしめしている。

アフリカに棲息するマルミミゾウのおよそ40%を把握している、ゾウ密猟モニタリングシステム(MIKE)プログラム によるCITESの モニタリング・サイトだけで、2011年に17,000頭が不法に密猟されたと推定される。2012年最初のデータでは、これらが改善されたという証拠は得られず、全体の数はおそらくもっと高い数字になるであろう。

これらの脅威には、急速な人口増加や、世界市場への供給のための大幅の農地拡大が進んだ結果、棲息地を奪われるという種の保存にとって長期的な脅威も含まれている。

国連事務次長でUNEP事務局長のAchim Steinerは、『CITES は、象牙のような製品の原産国、中継国、および消費国を巻き込み、目的認識、義務、想像力、協力、および指導力を新たにして、不法な野生動物に対する犯罪の取り締まりに再度力を注がなければならない』と語った。

『アフリカにおけるゾウ密猟の増加や、世界中の他の絶滅危機種を不法に捕獲することは、野生動物の棲息数を減少させるだけでなく、ツーリズムによって生活する人々や、野生生物監視員、また不法行為の取り締まりをしている野生動物保護スタッフを含む何百万人という人々の生活を脅かすことでもある』と付け加えた

CITESの事務局長John Scanlon は、『この報告書は、密猟や密輸を抑制するためには、消費国内の適切な人事、財源、ノウハウの共有、公共意識の向上、および法律の強化を行う必要があることを明白に示している』とした。

報告書は、象牙密輸のサプライ・チェーン(供給網)全体に対して法的措置適用を強化することや国内法体制の強化といった決定的行動を取るよう勧告している。取締官が、追跡、情報ネットワークや科学捜査分析のような革新的なテクノロジーを活用する訓練が、早急に必要とされている。

『マルミミゾウの集団が直面している増大する脅威に対応する早急な行動が必要だ、しかし、それを実現させようとする適切な政治的意思がある場合のにもそれは可能だ』とIUCN/SSCアフリカゾウ専門グループの議長Holly Dublin 博士は言う。

現場から司法まで、犯罪活動を防ぎ、違法な貿易と闘うための法的措置強化には、国連薬物犯罪事務所、CITES, 国際刑事警察機構(INTERPOL)、世界税関機構、世界銀行および他の国際的な関係機関を通じた、原産国・中継国・消費国にまたがる国際的な協働の改善が必要である。

これらの取り組みには、癒着腐敗との闘いや密輸組織の特定、需要削減も含まれる。

『組織犯罪ネットワークが、めったに処罰をうけることなく、起訴される恐れもほとんどない状態で、ゾウの密猟を利用し、前例のないほどの量の象牙を違法売買で売りさばき、かつ取り仕切っている』とTRAFFICの象牙貿易に関する専門家 Tom Milliken は言う。

さらに人間の急速な人口増加や農地の拡大により、ゾウの棲息地が約29%も失われようとしている。

現在、その数字は2050年までに63%に達する可能性があることを、いくつかの予想モデルは示しており、それはゾウの生存にとって、新たな重大で長期的な脅威になりうる。

報告書からの他の指摘

  • アジア向け象牙の大規模な差し押さえは、2009年以来2倍以上に拡大し、2011年には過去最高の数に達した
  • 1度に数100頭のゾウの象牙が船積みされるケースを含む象牙の大量移動は、アフリカにおける象牙密輸を高度に組織化された犯罪ネットワークがさらに掌握していることを示唆している。
  • 逮捕、告発、有罪判決がきちんとなされたという証拠がほとんどないことから、アフリカを拠点とする主としてアジア人による犯罪ネットワークは、めったに処罰されることなく活動している。
  • 世界的に見て、違法な象牙貿易は2007年比で2倍以上、1998年時点と比べると3倍以上に拡大している
  • アフリカの多くの都市で規制されていない象牙市場が増え、アフリカに住むアジア出身者の数が増えていることもまた、アフリカ大陸外での違法な象牙貿易を容易にしている。
  • 2011年には、ゾウ密猟は、MIKEが2001年に密猟監視を開始して以来、最高レベルに達し、その状態が2012年に改善されたという兆候はない。
  • 密猟は第一に、弱い管理体制と急速に経済成長を遂げるアジアからの違法貿易による象牙への需要の増大、特に世界一の象牙市場となった中国での需要増大によって拡大しつつある。
  • いくつかのケースでは、無法状態および大量の小火器によって、ゾウの密猟がに都合がよい状態を引き起こす紛争が、ハイレベルの密猟を助長している。

バンコクで行われた第16回CITES締約国会議で公表されたこの報告書は、CITESのためにTRAFFICが、IUCN種の存続委員会(SSC)、アフリカゾウ専門家グループ、MIKE およびゾウ貿易情報システム(ETIS)を含む情報源からの情報をまとめたものである

メディアへの注意

メディア向けの高画質グラフィック、写真は以下のアドレスから可能 www.grida.no

報告書の結論は CITES-led Monitoring the Illegal Killing of Elephants (MIKE) Programme, the Elephant Trade Information System (ETIS) and the IUCN/SSC African Elephant Specialist Group (AfESG), the African and Asian Elephant Database, the International Consortium on Combating Wildlife Crime (ICCWC) 、専門家との意見交換および多くの情報源の最新のデータから構成された。

詳細は下記までご連絡ください

Nick Nuttall, UNEP Director of Communications and Spokesperson at Tel. +41 795965737 or +254733632755, or Email: nick.nuttall@unep.org

Shereen Zorba, Head of UNEP Newsdesk, Tel. +254 788 526 000 or Email: shereen.zorba@unep.org

Juan Carlos Vasquez, Communications and Outreach Officer, CITES Secretariat - tel. +4122 917 8156, juan.vasquez@cites.org

Ewa Magiera; Media and Communications Officer, Mob: +41 79 856 7626, E-mail: ewa.magiera@iucn.org, Michael Dougherty, Head, Asia Communications, Mob: +66 81 371 4687, Email: michael.dougherty@iucn.org,


独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施した「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」のフォローアップの一環としてこのページを作成し、公開しています。

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