アフリカ熱帯林の現状と日本との関係

テロリスト集団、アフリカゾウを殺害し、象牙を資金確保に利用


The Washington Timesの記事を、AJFが翻訳・紹介するものです。
引用する際には、原文にあたってください。
Terrorists slaughter African elephants, use ivory to finance operations

テロリスト集団、アフリカゾウを殺害し、象牙を資金確保に利用


The Washington Times 2013年11月13日

アフリカにおいてこれまで以上に多くのテロリスト集団が、アジアの豊かになった中流階級の急成長によって高まる象牙への大きな需要で儲け、活動資金を調達しようと象牙の違法取引に参入している。

アル・カイダとつながりの深いソマリアのアル・シャバブ、アフリカ中央部のJoseph Konyの「神の抵抗軍(Lord's Resistance Army、LRA)」、そしてナイジェリアのボコ・ハラムといった集団は、兵士への賃金の支払いや武器や弾薬の購入のために、殺害したゾウの牙を密輸することで資金を得ている武装勢力の一部である。

最近、民間のセキュリティ会社Maisha Consultingの主任執行担当者Nir Kalron氏を伴って、アル・シャバブの象牙密輸への関与を調査したElephant Action LeagueのAndrea Crosta事務局長は、「アル・シャバブにとって象牙は木炭と同じように、約5000人と推測される兵士たちへの賃金の支払いに何よりもまず必要とされる現金を、素早くまた比較的簡単に手に入れる方法にすぎない」と語った。

「ケニアにおけるアル・シャバブの組織化されたネットワーク、貧弱な野生生物に関する法律、そしてお金を得るために命をかけることを厭わない相当数のケニア人の存在が、象牙密輸を容易で、利益を生み、且つリスクの低いものとしている」、とCrosta氏は述べた。

ソマリ人の武装集団は長いことケニア国内や周辺でゾウを密猟してきたが、アル・シャバブがこの状況を利用し始めたのはつい最近のことである。Crosta氏とKalron氏による調査では、アル・シャバブの象牙からの収益はひと月200,000ドルから600,000ドルと推定されている。

「アル・シャバブは象牙取引が巧みで、ケニアの密猟者や密売人から象牙を買い取り、それを直ちにソマリアの仲介人に転売し、莫大な利益を得ている」、とCrosta氏は述べた。

アル・シャバブを監視する米国当局は、「アル・シャバブは組織財政が著しく緊迫しており、その結果、組織は多様な他の収入源を追及している」、と言う。

「我々は、アル・シャバブや類似の地域テロリスト集団の収入源を特定するためにあらゆる手を打ち続ける」、と米国財務省スポークスマンのJohn L. Sullivan氏は述べた。財務省外国資産管理局は、世界規模で資金調達をするテロリストを追跡し取り締まる米国の諸機関の先頭に立っている。

12月、国連安全保障理事会は、「神の抵抗軍」によるゾウの密猟と象牙密輸の調査を求めた。

今年のEnough ProjectとSatellite Sentinel Projectによる調査で、Konyが「神の抵抗軍」の兵士らに対して象牙を持ってくるよう命じ、食料や武器、弾丸の購入に使用されたことが判明した。

コンゴのガランバ国立公園内での反政府勢力による密猟活動を調査した報告書は、Konyのグループから離反した元幹部らを含む複数の情報源からの情報に基づいている。

米国務省が水曜に、海外テロリスト組織として指定したボコ・ハラムもまた、象牙密輸取引から利益を得ている。

サブサハラアフリカの、その他多くのより小さな違法武装集団が、ゾウの密猟や象牙取引に携わっている。

象牙はテロリスト組織にとっての多くの収入源のうちの一つである。

「アフリカ諸国政府が以前から認識しており、また米政府が認識するようになってきたことは、これはもはや単なる(象の)保護という問題ではないということである、というのも、この象牙からの利益がテロ活動の資金となり、アフリカの諸地域を不安定化させているからである」、とAfrican Wildlife FoundationのスポークスマンであるKathleen Garrigan氏は述べた。アフリカ諸国政府も米政府も、これが平和と安全の問題であることを認識している。

「象牙の違法取引も資金源となっているテロリストの活動によって米国務省が取り組んだ活動の多くが基盤を掘り崩されつつあることから、米政府は決定的にこの問題にこれまで以上に関わっていこうとしている」、と彼女は付け加えた。

木曜日、合衆国魚類野生生物局(U.S. Fish and Wildlife Service)は、初めて、6トン近いアフリカゾウとアジアゾウの象牙を処分する予定だ。

米国は、デンバーの倉庫での象牙ストックの処分によって、密猟者や密輸取引人らへ、ゾウを殺害しそれによって利益を得る者を根絶し処罰するために出来る全ての措置を取る、というメッセージを送ることを意図している。

6月、フィリピンは象牙消費国の中で初めて象牙のストックを処分した。ガボン、ケニア、そしてサンビアもまた押収した象牙を処分した。

フィリピンに加え、香港やマレーシア、ベトナムでも大量の象牙が押収されている。

ケニア、タンザニア、そしてウガンダがアフリカにおける主な象牙の産出地である。

1989年、ワシントン条約が象牙の国際取引を禁じた。この禁止令によって、ゾウの密猟が急激に減り、ゾウの数は徐々に増加した。

しかしながら、アジア、特に中国とタイの豊かになった中流階級からの高まる需要に伴い、国際闇市場における象牙の価格は、アフリカ大陸全域でのゾウの密猟の劇的な増加を引き起こしながら急上昇した。

ワシントン大学のCenter for Conservation Biologyは、毎年50,000頭ものゾウが殺害されていると推測する。地上におよそ400,000頭のゾウが生き残っていることから推測して、アフリカゾウは事実上次の10年で絶滅すると、センターは予測した。

急増するビジネス

Elephant Trade Information Systemによる分析は、象牙の違法取引が20年間で最も高い水準になることを明らかにした。

野生生物保護に関わる諸団体は、毎年タンザニアで10,000 から25,000頭のゾウが象牙目的で殺害されていると推測している。

ジンバブウェでは先月、国内最大のフワンゲ国立公園内で、密猟者らが青酸カリを使用して、300頭以上のゾウを殺害した。

広大な地域の監視を担う地元の野生生物レンジャーは、しばしば、より重武装の密猟者より少ない。

一部のテロリスト集団は、他の収入源が圧迫されているために、象牙を狙うようになった。

アル・シャバブは2011年と2012年に、KismayoおよびMerkaという主要港を含むソマリアにおける重要な支配地域を失った。これらの後退によって、ソマリア南部および中央地域における税金の徴収能力を含む収入の一部が奪われた。

Elephant Action LeagueのCrosta氏は、24ヵ月に及ぶ調査の過程で、アフリカの複数の情報源が、アル・シャバブはソマリアの港を失った後、「物流に関して多くのことを再組織しなければならなかった」と語ったことを伝えている。

African Wildlife FoundationのGarrigan氏は、テロリストや犯罪組織にとって、象牙の密輸は武器や薬物の密輸と何ら変わりはない、と述べた。

「象牙は、活動に資金を供給するためにテロ集団や犯罪組織が利用する、単なるもう一つの商品なのです」と、彼女は語った。

象牙取引がそれ程お金になり、多くの組織が活動への資金供給の方法として選択しているのは、ゾウを銃殺し象牙を密輸取引するという野生生物犯罪が、密猟者や密輸者らにとってリスクが低いためである。少なくともこれまで密猟者らが受けたのは軽い処罰であり、それは大して活動を妨げるものではなかった。

「象牙が闇市場で金より高い価値を持つという事実と合わさって、それら2つの組み合わさった現実によって、象牙取引は彼らにとってより容易な資金稼ぎになっているのである。」

米当局者たちは象牙ネットワーク解明に力点を置く

米国国務省は水曜日、Vixay Keosavangという密輸業者が率いるZaysavang Networkと呼ばれるラオスの野生生物取引組織の破壊に繋がる情報に対して、100万ドルまでの報奨金を出すことを表明した。

野生生物密輸を叩く法案を起草したEdward R. Royce下院外交委員会委員長は、国務省の行動を称賛した。

「Vixay Keosavangのネットワークを壊せたならば、影響は世界中に現れる」と、カリフォルニア州の共和党員は述べた。「野生生物の闇市場で最も凶悪な関係者であるVixay Keosavangは、ラオス政府から事実上の免罪符を与えられている」

公式にも、プライベートでも、アフリカの野生生物保護を個人的な使命としているヒラリー・ローダム・クリントン(Hillary Rodham Clinton)元国務長官は、象牙取引とアフリカのテロリスト集団の繋がりを示した。

Hillary氏は、9月のニューヨークにおけるClinton Global Initiativeの会議で「アフリカに広がるアル・シャバブを含むテロリスト集団らが、象牙取引からテロ活動のための資金の多くを得ているという証拠が出てきている」と語った。

7月のタンザニア訪問の際、オバマ大統領は野生生物取引と戦うよう大統領令を発した。

この大統領令は米政府に対し、他国の政府との協力関係の提示を含む野生生物密輸と戦うための国家戦略を年末までに作成するよう要求している。

「我々は、国家を超えて組織された犯罪および武装民兵らが密猟そして違法野生生物取引への関与を増大していることに懸念している」と、国務省関係者は語った。

「これらの活動は、大陸全域で、経済や健康、安全、そして法の支配に悪影響を及ぼしている。」



独立行政法人環境再生保全機構より平成24年度地球環境基金助成金を受けて実施した「アフリカの熱帯林の環境保全と日本をつなぐ生物多様性保全の教育・普及活動」のフォローアップの一環としてこのページを作成し、公開しています。

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